長崎県音楽連盟

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マダム・バタフライ フェスティバル更新情報

蝶々さんの舞、春から秋へ:続・連続エッセイ④

【2022年01月22日】

 突然ですが、皆さんは、蝶々の数え方をご存知ですか?1羽、2羽、、、1匹、2匹、、、。正解は、1頭、2頭だそうです。その昔、イタリアオペラのプリマドンナは恰幅が良かったからということではなく、英語の数え方「head」に由来するそうです。数あるオペラの中でも、最初から最後まで登場し、ドラマティックに歌い続ける蝶々さんには、ヘビー級の技量と体力が求められるのかもしれませんが。

 さて、大変残念なお知らせですが、2月のフェスティバルでは、蔓延防止措置の発令とそれに伴う長崎市の感染対策のため、中止になってしまいました。ご案内しては中止の繰り返しで、大変心苦しいのですが、ウイルスはしぶとく、今回の開催を断念しました。

 予定していた公演では、4人の蝶々さんが登場。Pおじさんが語る物語の中で、女中のスズキといっしょに美しい花の二重唱の披露を、尼崎裕子さんと松本佳代子さん。そして、蝶々さんのアリア3曲を熱唱してくるのが、納冨景子さんと福地友子さんの予定でした。

 プッチーニは、バタフライを描くときに理想の女性像を蝶々さんにイメージしていたらしく、プッチーニ記念館には、蝶々さんに関する多くの資料が残っています。パリ万博で描かれた東洋、あるいは日本。1900年ころの西洋で日本人女性はどのように思われていたのか、万博のポスターや当時の資料を見ると、ちょっと首をかしげたくなるような部分もありますが。しかし、蝶々さんに想いを馳せたのは、口うるさい元気なイタリアのおばちゃんでもなく、顎を突き出して闊歩するような西洋の女性ではなかったのだと思います。きっと、ややうつむき加減で歩き、やさしさと強さを胸の奥に秘めた、ヨーロッパ男性の憧れの女性像だったのかもしれません。演出家の三谷礼二先生はこんなことを書いていらっしゃいます。「西洋男性の東洋女性の従順さに対する甘い考えが基調にある」と(『オペラのように』 筑摩書房、1992)。4巨頭の、いや4人の歌姫によるプッチーニの憧れの「蝶」が、仕切り直しの秋の公演(現在、10月30日を予定しています)で、無事に舞い降りることを祈っています。詳細が決まりましたら、ご案内いたします。

(堀内伊吹)

©︎G.プッチーニ財団©︎G.プッチーニ財団